なぜ絵馬には「馬」の字が入っている?貴船神社で白馬・黒馬と絵馬の由来をたどる

馬について

神社を訪れると、当たり前のように見かける「絵馬」。

願い事を書いて奉納するものだということは知っていても、よく考えてみると不思議な名前です。

なぜ「絵」に「馬」と書くのでしょうか。

調べてみると、その名前は単なる呼び名ではありませんでした。

かつて人々は、願いを神様に届けるために、本物の馬を献じていたといいます。

そして京都の山あいにある貴船神社は、そんな馬と絵馬との関係を今でも感じられる場所のひとつです。

今回は実際に貴船神社を訪れ、境内にある白馬と黒馬、そして現在授与されている絵馬を見ながら、その由来をたどってみました。

そもそも絵馬は、なぜ「馬」なの?

現在の絵馬というと、木の板に願い事を書いて奉納するものを思い浮かべます。

しかし、そのルーツには本物の馬がありました。

神社本庁によると、古くは祈雨や止雨などの願いを込めて、神様へ生きた馬を献じる習慣がありました。

神様へ献じられた馬は「神馬(しんめ)」と呼ばれます。

馬は古くから人々の生活に深く関わってきた動物です。移動や農耕、軍事などさまざまな場面で重要な役割を担う一方、神様の乗り物としても考えられてきました。

とはいえ、本物の馬を一頭奉納するのは簡単ではありません。

そこで時代が進むにつれて、

生きた馬
↓
土や木で作った馬
↓
板に馬を描いたもの

へと形が変化していったと考えられています。

こうして見ると、「絵馬」という言葉も分かりやすいですね。

もともとは文字通り、「馬を描いた絵」だったわけです。

現在では馬以外にも干支や神社ゆかりのもの、キャラクターなど、さまざまな図柄の絵馬があります。

それでも「絵馬」という名前だけは残っています。

→ 神社本庁公式|絵馬の由来と変遷

絵馬には1300年以上の歴史がある

絵馬の歴史を調べていて驚いたのが、その古さです。

国立国会図書館のレファレンス協同データベースでは、現在確認されている最古級の絵馬として、大阪の難波宮跡から出土した7世紀中頃の絵馬が紹介されています。

「絵馬」という言葉についても、1012年の文献に「色紙絵馬三疋」という記述が確認されています。

普段は何気なく願い事を書いている絵馬ですが、かなり長い歴史を持つ文化だということが分かります。

では、なぜ貴船神社と絵馬の関係が深いのか

今回訪れたのが、京都市左京区にある貴船神社です。

貴船神社は、水を司る神様を祀る神社。

山の中を流れる貴船川沿いにあり、実際に歩いてみても「水のある場所」という印象を強く感じます。

そして水を司る神社だからこそ、古くから雨に関する祈りが行われてきました。

貴船神社の公式説明によると、

  • 日照りのときには黒馬
  • 長雨のときには白馬または赤馬

を献じ、雨乞いや雨止みを祈願していたとされています。

雨の祈願のため実際に馬を献じていた歴史があり、絵馬発祥の地として伝えられている場所であるということです。

京都総合観光案内所の2026年「午歳 干支まいり」でも貴船神社は、「絵馬発祥の地」として紹介されています。

「なぜ白馬と黒馬がいるのだろう?」

以前貴船神社を訪れた際、境内に並んでいる2頭の馬が気になっていました。

改めて由来を調べてみると、この色にもちゃんと意味があったというわけです。

今回改めて貴船神社を訪れ、白馬と黒馬をそれぞれじっくり見てみました。

現在境内にいるのはもちろん本物の馬ではありません。

それでも、かつてこの場所で天候を願い、馬が神様へ献じられていたことを知ってから見ると印象が変わります。

単なる馬の像というより、

貴船神社と馬との歴史を現在に残している存在

として見えてきました。

競馬場ではサラブレッドを見ることが多い編集者にとっても、「馬と人との関係にはこんな形もあるのか」と感じられる場所でした。

今も白馬と黒馬の絵馬がある

そして今回、編集者も実際に貴船神社で絵馬をいただきました。

現在も貴船神社では、白馬と黒馬が描かれた絵馬が授与されています。

2026年10月に訪れた時点では初穂料700円でした。公式サイトにも同じ白馬・黒馬の絵馬が掲載されています

本物の馬を神様へ献じていた時代から考えると、形は大きく変わりました。

それでも「馬を通して願いを届ける」という文化の名残が、目の前の絵馬に残っているように感じます。

今回の取材で一番面白かったのは、この部分でした。

本やインターネットで「絵馬は馬の奉納が由来」と読むだけなら一文で終わります。

でも実際に貴船神社へ来て、

白馬を見る。
黒馬を見る。
そして白馬と黒馬が描かれた絵馬を手に取る。

そこまで体験すると、「絵馬」という言葉の意味が少し具体的になった気がしました。

【絵馬を授かりたい方へ】

貴船神社の本宮は早朝から参拝できますが、絵馬やお守りなどを授かる授与所の受付時間は9:00〜17:00です。

今回紹介した白馬・黒馬の絵馬を希望する方は、授与所の受付時間内に訪れましょう。

なお、初穂料700円は私が2026年10月に訪れた際の金額です。変更される可能性があるため、訪問時にご確認ください。

貴船口駅から歩いて貴船神社へ行ってみた

今回編集者は、出町柳周辺にバイクを停め、叡山電車を利用して貴船へ向かいました。

出町柳
↓
叡山電車
↓
貴船口駅
↓
徒歩
↓
貴船神社

というルートです。

貴船口駅からは京都バス33系統も利用できます。

公式サイトでも、貴船口駅からバスに乗り「貴船」で下車する方法が案内されており、バス停から神社までは徒歩約5分です。

一方、駅から歩く場合は約2km・30分が目安となっています。

今回は行きを歩いてみました。

実際に歩いた時間も30分弱。

ただ、「30分なら散歩くらいかな」と考えていると少し印象が違うかもしれません。

貴船神社へ向かって、しっかりと上っていきます。

きつい登山というほどではありませんが、平坦な観光地を30分歩くのとは違います。

その代わり、川を眺めながら山の中を歩くので、貴船らしい雰囲気をじっくり味わえました。

行きは歩いて景色を楽しみ、帰りはバスを利用する方法もありだと思います。

編集者も帰りはバスを利用しました。

【貴船口駅からのアクセス】

貴船口駅から貴船神社までは徒歩約30分です。行きは上り坂が続くので、歩きやすい靴がおすすめです。

歩くのが大変な方は、駅前から京都バス33系統を利用できます。「貴船」バス停で下車後、神社までは徒歩約5分です。

私は行きを徒歩、帰りをバスにしました。行きは貴船川の景色を楽しみ、帰りは楽に駅まで戻れたので、この組み合わせもおすすめです。

なお、京都バス33系統は季節によって運行ダイヤが変わる場合があります。利用前に最新の時刻表をご確認ください。

→ 京都バス公式|時刻表検索

秋なら叡山電車の「もみじのトンネル」も楽しめる

今回出町柳から叡山電車を利用した理由のひとつが、貴船までの移動そのものを楽しめることです。

叡山電車の市原駅~二ノ瀬駅間には「もみじのトンネル」と呼ばれる区間があります。

今回はまだ本格的な紅葉前でしたが、秋が深まれば車窓から紅葉を楽しみながら貴船へ向かえます。

なお、2026年は11月7日〜12月6日に、叡山電車の「もみじのトンネル」で徐行運転とライトアップが予定されています。

貴船神社を訪れるだけでなく、行き帰りの電車から紅葉を楽しむこともできそうです。

私が訪れたときはまだ本格的な紅葉前だったので、いつか紅葉の時期にも訪れてみたいと思います。

→ 叡山電車公式|2026年紅葉の徐行運転・ライトアップ

秋に再訪した際には、

  • もみじのトンネル
  • 紅葉した貴船川
  • 朱色の灯籠と紅葉
  • 白馬・黒馬と紅葉

なども追加で紹介する予定です。

まとめ|競馬場の外にも、馬を訪ねる旅がある

普段「馬を見に行く」と聞くと、競馬場や牧場を思い浮かべるかもしれません。

でも馬と人との関わりを追いかけていくと、神社や祭り、地域の歴史にも馬が登場します。

今回の貴船神社もそのひとつでした。

普段何気なく見ている「絵馬」という言葉も、もともとは本当に馬と関係しています。

そして貴船では、白馬と黒馬を見ることで、その歴史を今でも感じることができます。

競馬場で走る馬を見るのとはまったく違う馬との出会いでしたが、こういう場所を訪ねるのも「馬をきっかけにした旅」の面白さなのかもしれません。

紅葉の季節になったら、今度は秋の貴船でもう一度、白馬と黒馬を見に行ってみたいと思います。

京都には、貴船神社以外にも馬との関わりが深い神社があります。

その一つが、伏見区にある藤森神社です。こちらでは、古くから伝わる駈馬神事や、境内に飾られた馬の大絵馬を通して、馬と人との歴史を感じることができます。

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